最も大切なことは、「骨折を防ぐ」ことです。 また、年齢とともに自然では減っていく骨密度を減らさないで維持することも大切です。 骨粗しょう症の予防と治療には、食事療法、運動療法、日光浴、薬物療法があります。骨粗しょう症は「骨の生活習慣病」とも呼ばれており、生活習慣の改善によって骨密度の減少を予防することができます。 食事療法 タンパク質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの摂取 運動療法 骨を弱くしない運動と転ばないようにする運動の2種類 日光浴 日光浴も骨粗しょう症にとって重要です。 薬物療法 大きく分けると飲み薬と注射にわかれます。 食事療法 以下の成分が含まれる食品は、骨密度、骨質の向上に効果的です。また、日常の食生活では糖分やリンが多く含まれる加工食品、塩分、カフェイン、タバコ、アルコールの摂取を控えることも大切です。 骨粗しょう症のために摂りたい食品 カルシウム 魚介類・海藻 ししゃも、いわし丸干し、干しエビ、しらす、しじみ、ひじき、わかめ など 豆類 豆腐、納豆 など 乳製品 牛乳、スキムミルク、チーズ など 野菜 小松菜、チンゲン菜、いりごま など たんぱく質 肉類(鳥肉、赤身肉)、魚類、卵、乳製品、大豆 など ビタミンD 魚介類 しらす干し、いわし丸干し、すじこ、さんま、ぶり、鮭、うなぎ、煮干し、アンコウの肝 など きのこ きくらげ、干ししいたけ など *野菜、豆、イモ類にはほとんど含まれない ビタミンK 野菜・豆 納豆、抹茶、パセリ、しそ、明日葉、モロヘイヤ、小松菜、ほうれん草、春菊、大根 など 魚介類・海藻 乾燥わかめ、海苔、おかひじき など 運動療法 身体のバランスを保つこと筋力を保つことが重要です。 骨を弱くしない運動 衝撃や負荷の大きい運動です。 ジャンプ運動がその一つで、バレーボール、バスケットボール、縄跳び、ジョギングなどが挙げられます。 但し、高齢者の場合は、腰や膝を痛める可能性があるので注意が必要です。背筋運動、片脚立ち、スクワット、ウォーキングなどがお勧めです。 【筋力強化運動】 立った状態で行ってください。 スクワット 太ももあげ かかとのあげおろし 転ばないようにする運動 高齢者の転倒は骨折に結びつきやすく、そのまま寝たきりになる可能性もあります。 そのため、転倒予防のため下肢の運動で「転ばない」身体をつくることが大切です。 【バランス保持運動】 座布団の上で片足立ち 前後左右へのステップ 四つ這いバランス 日光浴 ビタミンDは紫外線を浴びることで皮膚から生成されます。 特に冬場は日光を浴びる機会が減るため、ビタミンDを含む食品を積極的に摂取し補うことも大切です。 薬物療法 【大事なこと】 原則として、薬はずっと続けなければなりません。 1~1年半以上継続しなければ確実な効果は出ません。 4~5年継続すると中心となる薬を休んでもしばらく効果が継続する場合が少数ですがあることも最近わかってきました。 骨粗しょう症の治療薬 骨を壊れにくくする治療薬と骨を作る治療薬の2種類があります。 骨吸収抑制薬(骨を壊れにくくする) 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM) 女性ホルモンの代用薬。女性ホルモンの副作用(乳癌・子宮癌の増加など)はありません。 骨密度を増加し、椎体骨折を少なくする効果が立証されています。大腿骨近位部骨折の発生を少なくする効果はありません。静脈に血栓や塞栓ができる副作用の可能性があります(頻度不明)。50~60歳代前半の比較的軽症の骨粗鬆症に用いられます。 ビスフォスフォネート 世界的に基準となる薬、日本では2001年から使えるようになりました。 骨密度を増加し、椎体骨折も椎体以外の骨折も少なくする効果が立証されています。特に、大腿骨近位部骨折を少なくする効果も立証されています。幅広い年代に用いられます。 飲み方が、非常に特殊で、朝起きたら、すぐにコップ1杯の水で飲み、その後30分~1時間は、水以外を飲んだリ、食べたりしてはダメ、横になってはダメ(座っても、立っていても、歩いてもよい)です。この薬は食道の病気がある人は飲めません。また、この薬は胃でしか吸収できないので胃を切除した人は不利です。 高齢者で胃の吸収力が落ちてくると薬の吸収が悪くなり、効果も出にくくなります。副作用が出る確率が薬としては高く(15~20%)、そのほとんどが胃腸障害(胃が痛くなる、ムカムカするなど)です。 骨形成促進薬(骨を作る) テリパラチド 現在のところ、世界中で骨を作る薬はこれしかありません。 毎日一回、糖尿病の患者さんがするインスリンという薬の様に、自分でお腹や太腿に皮下注射します。針は非常に小さく(米粒以下)、細く「注射」というより「押し付ける」というイメージです。 毎日、針を取り替えるのは自分で行いますが、簡単で80歳代後半の方でも、ほとんど自分で行っています。もちろん家族が代わりに注射をしてあげている患者さんもいます。注射器1本は、4週間分で、原則として4週間毎に病院に来て新しいものと交換します。使用期限があり、現在のところ一生の間に2年間しか使えません。 背骨の骨密度を増やす椎体骨折を防止する効果は非常に大きく1年間ではビスフォスフォネートの約2倍、2年間ではビスフォスフォネートの約10年分の効果が期待できます。また皮下注射なので血管が細くても問題ないなどの長所があります。 骨粗しょう症関連記事 骨粗しょう症 骨粗しょう症の症状 骨粗しょう症の診断(検査)