腰部脊柱管狭窄症は神経の通り道である脊柱管が先天的または後天的に狭くなり、脊髄神経根や馬尾を圧迫し、下肢の疼痛、感覚障害などの多彩な症状をもたらす病気です。 本疾患特有の症状として間欠性跛行が生じます。これは歩行の持続に伴って両下肢のしびれ、痛み、脱力が生じ、やがて歩行不能となる症状であり、腰を掛けた状態での休憩やしゃがみ込むことで、症状は軽快します。姿勢変化の関与が非常に重要で、自転車や乳母車を押すなど、腰を前かがみにした姿勢では症状が出ないことが多いです。 部脊柱管狭窄症による下肢の筋力低下や感覚鈍麻といった麻痺の症状、著明な歩行障害、頻尿・便秘といった膀胱直腸障害などが出現した場合には、手術の適応となります。 治療について 腰や下肢の痛みが主な場合はまず保存療法を考慮します。 保存療法では、生活上の注意点、薬物療法、安静、運動療法などの治療を行います。 生活上の注意 台所などで長時間立っていることで、下枝がしびれたり痛くなってきたりする場合は、肘をつくようにする、あるいは、5-10cmくらいの足台に片脚をのせるといったように、腰椎の前彎を軽減させる姿勢をとると、より長く立っていることができます。 また、歩行の時に杖をついたり、老人車を押すことで、少し前かがみの姿勢をとると、より長く歩くことができます。 薬物療法 腰や下肢の痛みが強い場合、消炎鎮痛薬やビタミン剤の内服が有効なことがあります。また、最近、プロスタグランジンというお薬が圧迫されている神経の血流を改善させ、しびれや間欠性跛行を軽減させる効果があることが分かってきました。症状に応じて点滴や内服で投与します。 こうしたお薬の効果には個人差が大きいため、主治医とよく相談の上、服用してください。 安静 急激な腰痛、下肢の痛みには、初期治療として、安静が有効です。しかし、長期間、床に伏すことは、循環機能・呼吸機能の低下、褥創、関節の拘縮、筋力の低下といった2次的弊害が大きな問題となるため、痛くない範囲で体を動かすことも大切です。 運動療法 体幹の屈曲運動を中心としたストレッチや筋力強化訓練を行います。筋力が強くなることで腰が安定して腰痛、下肢痛の軽減、日常生活の適応性の改善が見込まれます。 歩行練習は、過剰に行うとむしろ間欠性跛行が悪化することがあるため、歩行はできる範囲で行い、遠くへの移動には自転車や車の使用をお勧めします。決して無理しないことも重要です。